言わずと知れたヒッチコック監督のミステリー映画、日本で公開されたのが1942年なので流石にオレだって生まれる前だ。原題は”Suspicion"、今ならそのまま”サスピション”じゃなかろうか?でも当時の邦題は”断崖”で確かに重要な場面ではあるが原題をそのままに”疑惑”とか”疑念”でも良かったんだがな、、。
ストーリーはえらく簡単だ、ジョニー(ケイリー・グランド)は根っからの詐欺師、電車内で出会った資産家の令嬢、リナ(ジョーン・フォンテイン)に言い寄りあっと言う間に結婚に漕ぎつけてしまう。まさに”小娘をしゃぶ、、じゃなくて結婚欲に駆らせる”手際は見事なモンだ。
こりゃ絶対に何かありそうだ、と見ている側には思わせるしこんな”悪人”がのさばって行くのはリナが余りにも可憐で世間知らずの令嬢だけあって可哀想になる。ジョニーには定職もないし借金まみれで博打好き、そのプレイボーイ振りで女性には人気があるのでこんな結婚生活が上手くいくのかと心配になって来る。
案の定、映画の真髄はその口八丁手八丁のジョニーVS生娘リナの心理劇でその辺りはヒッチコック監督の独壇場だ。主にリナの方がジョニーのやる事なす事が信じられず自分に魔手が伸びて来て親友のビーキーが不審死を遂げたような事になるのではないかと不安に苛まれる様子はオスカーで主演女優賞獲得に繋がっている。
ジョーン・フォンテインも一番美しい頃で姉のオリビア・デ・ハビランドと二人はこの時代美人姉妹としてそれこそハリウッドの頂点に立っていた。この三歳年上の姉と二人は東京生まれなのは有名な話だ。
現在のホテル・オークラ別館とスウェーデン大使館の間にあった邸宅で生まれている。1917年生まれでその後一旦母国、英国へ帰る予定だったのが結局、カリフォルニアに落ち着く事になり二人は演劇の世界へ入って行ったようだがジョーンは16歳の頃に父親と暮らす為に東京へ戻りそのまま聖心インターナショナルに通っていたらしい。
この”断崖”出演の前年には同じヒッチコック監督で”レベッカ”にも出演しているがその時はローレンス・オリビエが共演でその映画でも主演女優賞にノミネートされている。残念ながらオレの記憶にあるのはその二本くらいでそれ以外は見ていない、、。
姉のほうは”風と共に去りぬ”でのメラニー役しか頭にないのだが、二人ともちょっとばかり世代が違っていたようだ。