アガサ・クリスティの書いた原作は1937年に発表され日本語に翻訳された時の邦題は”ナイルに死す”だった。それが1978年にはピーター・ユスティノフがポワロを演じ今回はケネス・ブラナーが”オリエント急行殺人事件”(17年)に続きポワロを演じ監督も制作もやってしまった。個人的には翻訳時の邦題の方が好きなんだが、、。
まあ犯人は原作通りなのでミステリーとは言っても最初っからネタバレになっているがそれでも時代に合わせた作風はなかなかの出来だった。
莫大な遺産を相続したリネットにはガル・ガドットが扮し結婚する相手、サイモンにはアーマー・ハマー、アーフェミアにはアネット・べニング、そしてリネットの元カレで息子のブークにはトム・ベイトマンが夫々配役されていた。
ナイルに浮かぶ大型客船SSカルナック号はこの撮影の為にわざわざ建造されたらしいが船内は恐らく陸上のセットで撮影されている雰囲気だった。まあ”オリエント急行”と同じ手法ではなかろうか?
これまで色々な俳優さんがこのベルギー生まれのエルキューロ・ポワロを演じているがどうしても一番長くシリーズとして見ているデイビット・スーシェが似合っている気がする。一番素顔に近いメイクで出ていたのは”エクゼクティブ・デシジョン”(96年)で演じたテロの首謀者かも知れない。
っとまあこれまでポワロを演じた人達なんだが容姿が原作に一番近いと言う点ではこれはアガサ・クリスティ女史に聞かねばならないがボクが一番に押すデイビット・スーシェはその母国語であるフランス語訛りのセリフが一番巧いと思うのだ。
無論全編英語だが時たまヘンテコリンな発音で”モナミ”とか”テル・トゥー・ミー”とか面白い表現をする。それにヤマ場で犯人を前に激高する時のセリフ回しが実に上手いのだ。如何にも怒りに駆られて英語の発音に口がついて行けない、、そんな感じで立て板に水が如く犯人を凹ませる場面になるとやっぱり彼がダントツで上手いのだ。
今回もケネス・ブラナーが真犯人を前に糾弾する場面があるのだが同じ怒り方でもチョイと違うのだ。デイビット・スーシェみたいな口から泡を吹かんばかりに英語の機関銃を撃っているような雰囲気には及ばなかった。