”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”寒い国から帰ってきたスパイ” (65年)

やはりこの映画は素晴らしい、、1963年に出版されたジョン・ル・カレ原作の”The Spy Who Came In From The Cold”の映画化で主演がリチャード・バートンで恋仲になる女性がクレア・ブルーム、、監督はマーティン・リットで時代は英国とソ連が激しく対立していた頃の冷戦下、まさにリアルタイムの背景だ。

 

 

 

映画の冒頭は東ベルリンのチェックポイントチャーリー、西と東を繋ぐ境界線でリーマス(R・バートン)は東側から逃げて来る東ドイツ政府の高官、リーメックが亡命して来るのを待っている。やっとその姿を認め受け入れる準備をしている最中、リーマスの目の前で東側の諜報部によって射殺されてしまう。

そんな幕開けでリーマスはベルリンに駐在している諜報部の責任者だと判る。そしてこの作戦が失敗しロンドンの本部へ呼び出された彼は情報部の長官、コントロールから叱責を受け異動させられる覚悟で出頭する。

この頃は”MI6"とは呼ばれておらずコントロールが司令官、そしてジョージ・スマイリーも諜報部の同僚として出て来る。まあこの辺りは同じジョン・ル・カレが原作を書いているので辻褄は合うのだが後年、映画化された”裏切りのサーカス”と同じ設定である。時代は同じ頃だが”裏切りのサーカス”ではコントロールが諜報部に潜伏していると思われる二重スパイを摘発するのをジョージ・スマイリーに託すのだ。

この映画ではスマイリーの同僚がリーマスで諜報部に潜んでいるスパイ探しと同時に東側に漏れている情報の信ぴょう性とその首謀者を探し出す事が最大の焦点になっている。人物描写はかなり複雑に入り組んでいてしっかり画面を見ていても一体誰が味方で誰が二重スパイなのか観客にも判らない。

無論アクションが満載されている訳でもないし銃撃戦が起こる訳でもない、ひたすら地味なスパイ映画ではあるがそこにはモノクロの画面に苦悩するリーマスと実に寒そうな背景が広がっている。

映画の冒頭でコントロールに左遷されたり町の小さなデリショップで主人を殴りつけ刑務所送りになるリーマスだがそれら全てがある作戦の為に張り巡らされた手法だったと判る頃にはどっぷりのこの映画の緊張感に浸かってしまっている。

見終わって気がついがた恐らくこれも10回やそこいらは見ているハズだ、にも関わらず毎回新発見があるのには驚かされるぜ、。

演技力は勿論だが脚本、演出、プロダクションデザイン、撮影、編集、音楽そしてその全てを監督してオーケストラの指揮者が如く一つの作品にまとめ上げたマーティン・リット監督の技量には脱帽だ。