”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”テーラー 人生の仕立て屋” (20年)

何の先入観も予備知識もなくチャンネルを合わせてしまった。さて見るかな、、っと思わせたキーワードは、、ギリシャ映画、長く続く高級仕立て屋が新商売に乗り出す、まあそれと邦題じゃなかろうか?原題は単に”Tailor"なのでそれだけだったら見てないかも知れないが”人生の仕立て屋”って副題にヤラれた。

ギリシャ最大規模のテッサロニキ国際映画祭では、ギリシャ国営放送協会賞、青年審査員賞、国際映画批評家連盟賞の3冠に輝いた。

とも書かれていたのだがそれは映画を見終わってから読んだので見たいと思わせるに至った予備知識にはなってない。

 

 

映画のストーリーは最初から最後まで至極単純明快で舞台はアテネ、其処で36年も高級テーラー(仕立て屋)として男子のスーツを手作りする父と息子の物語だ。ギリシャ国債不履行の影響で経済が破綻寸前、市内にあった小さい個人経営の店舗もまともに不況風にあおられ銀行に差し押さえられてしまう。そのショックで親父さんは倒れてしまい入院生活を余儀なくされる。

息子のニコス(ディミトリ・イメロス)は寡黙だが腕は確か、でも高級紳士服を求めて来る客は激減してしまい店には誰もやって来ない。そんな中で思いついたのがリアカーに仕立て用の布地を乗せて自分から移動する露店販売を思いつく。人通りの多い場所を見つけちゃ毎日リアカーを引いて行くのだがそれもなかなか思うようにならずタマに来た客には値切られる始末で材料費にもならない。

 

 

そんな毎日だったがある日寄って来たおばちゃんが”アンタ、うちの娘のウェディング・ドレスは作れないのかい?”と聞いて来る。散々値段の交渉もするが思うような金額で受注出来ない、、でも仕事がないのでやるっきゃないだろうと決心して仕立て屋人生初めて女性のドレスを作る決心をする。

そんなお話でそれから徐々に注文が入るようになりせっせと人力で引っ張っていたリアカーも次はバイクで引っ張るようになりかなり遠くまで営業に行けるようになる。

すっかり女性ものが専門になるなか紳士服の需要はほぼ皆無、自宅の隣に住んでいる洋裁好きのオルガ(タミラ・クリエバ)の手伝いもあってプレタポルテも売るようになり一気に”人生の仕立て屋”としてバイクから今度は大型トレーラーで移動販売&仕立て業に励んで行くようになる。っと言う人生転換の成功物語でした。

チョイと端折っている部分もあって見ている側は感情移入がし難い、、と言うかしようとすると場面が変わってしまうので物足りなさ感が募る。それにオルガにはタクシーの運転手をやっているダンナさんと小学生の女の子もいるのだが彼らとの関わりがイマイチ良く理解出来なかった。ニコスは独身だし誰を連れ合いに持って来ても良いのだがオルガ夫婦は円満らしいし家庭を放り出して、、と言う展開にはならなかった。

まあ車椅子の親父さんに最初、”ナンで女性のウェディング・ドレスだ?”と言われ”オマエは腕の良い伝統を重んじる男子スーツの仕立て屋ナンだぞ”、、とも言われるが完成したウェディング・ドレスを検証して”良い腕前になったなあ~、、”と褒められる場面がこの映画一番の見せ場だったかも知れない。ピカリと光る佳作ってところか??