”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”善き人のためのソナタ” (06年)

これはオレの勘違いだった、、てっきりティム・ロビンスが素性の知れない隣人に扮する映画、”隣人は静かに笑う”(98年)と混同していた。こちらはドイツ映画で東の壁が崩壊する1989年までの東ドイツに於ける秘密警察(国家保安局)による民間人を監視する様を描いた秀作だった。以下はウィキに記載されていた背景、;

 

原題の独題: Das Leben der Anderen「他人の生活」)は、2006年ドイツ映画。 監督はフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク、出演はウルリッヒ・ミューエマルティナ・ゲデックセバスチャン・コッホなど。東ドイツシュタージのエージェントを主人公にしたドラマで、当時の東ドイツが置かれていた監視社会の実像を克明に描いている。

第79回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した。1984年の東ベルリン。国家保安省(シュタージ)の局員ヴィースラー大尉は国家に忠誠を誓っていた。ある日彼は、反体制の疑いのある劇作家ドライマンとその同棲相手の舞台女優クリスタを監視するよう命じられる。さっそくドライマンのアパートには盗聴器が仕掛けられ、ヴィースラーは徹底した監視を開始する。しかし、聴こえてくる彼らの世界にヴィースラーは次第に共鳴していく。そして、ドライマンが弾いたピアノソナタを耳にした時、ヴィースラーの心は激しく揺さぶられる。

 

映画のスタイルは古い作品でフランシス・フォード・コッポラが監督したプロの盗聴者を描いた、”カンバセーション、、盗聴”(74年)に似てなくもないが雰囲気は”ロシア・ハウス”っぽいところがあり盗聴により知り得た事柄に毎日監視役として聞いている側が何時しか共感を感じて思いがけない展開になってしまうと言うお話だ。

広範囲に影響力を持つ舞台脚本家、作家に新聞雑誌等の記者たちは国の内情を西側社会に伝えるのが役目ではあっても社会主義国家に於いては国の内情を勝手に書かれては困る。そんな背景から監視の目を向けられたのが劇作家、ドライマンで彼の自宅に盗聴器を仕掛け24時間体制で監視する事を命じられるのがその道では優秀な尋問者と認められているヴィースラー大尉である。

映画はほぼ全編、この盗聴されている側とする側の描写に終始するのだが終盤、監視している側が一番気にしている事柄とは東側での自殺者の数字だ、これが公表されるのは避けたいとその7年くらい前から統計数字は公表されていないらしい。

それが80年代後半って事に驚かされる。日本ではバブル最盛期で手あたり次第に諸外国の投資物件を買い漁っていた時期だ、なのに東ドイツじゃそんな事に拘ってそんな情報が西側に漏れないようにあの手この手、、を尽くしていたとは。民家に勝手に入り込み盗聴器を仕掛けるってのは犯罪じゃなかったんだろうか?まあそれはさて置き、終盤は既に壁が倒壊し4年後、、更に2年が経過してヴィースラー当人は降格されしがない郵便局勤めで毎日郵便物のは配達仕事をやっている。

ふと通り掛かった書店に見覚えのある著作者が表紙を飾る分厚い書籍が、思わず店内に入りその本を手に取ると作者はドライマンでタイトルが”他人の生活”とある。そして最初のページを括ってみると其処には”HGW XX/7に捧げる”と書かれているのだ。この不可解な文字列は当時、ヴィースラーが使っていた暗号名なのだ、。イヤ~、この衝撃的なエンディングにはヤラれたよ、。

アカデミー賞外国語映画受賞納得の一作でした。派手さもなく緊迫感がそれ程ある訳でもなく妙に淡々としているのだがこれには参りました。