”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”セントラル・ステーション” (98年)

これはボクとしては珍しいブラジルとフランスの合作映画だ。もっとも舞台はリオ・デ・ジャネイロだし配役もブラジル人の俳優さんが中心、原語は全編ポルトガル語なのでフランスっぽい箇所は全くない。

タイトルになっている”セントラル・ステーション”は英語だがポルトガル語の原題は”Central Do Brasil"となっていて別に”駅”に拘っているようでもない。確かに主人公のおばちゃんは毎日この”セントラル駅”で代筆業を営んでいるので的外れなタイトルでもないのだが、、物語はその後、ロードムービー風になって行くので駅の場面は冒頭だけである。

 

 

 

そんな映画なので此処はもっと日本人受けする邦題を付けて欲しかったし配給元ではそれをやる価値がある程に秀作だと思う。

元教師のドーラ(フェルナンダ・モンテネグロ)は駅の構内に机を一つ出し読み書きの不自由な人たちを相手に手紙の代筆業をやっている。このドーラ、なかなかのくせ者で折角口述した手紙を投函せずに家に持ち帰り勝手に読んだりしているし気に入らない告白文みたいなモノは廃棄してしまう。

そんなある日、彼女の前に母親と9歳になる息子のジョズエがやって来る。頼まれて代筆を始めるのだがそれはプイっと出て行った夫にもう一度会いたい、息子に会わせたいと言う内容だった。その母親が帰り際、通りに出たところで息子を庇おうとしてトラックにはねられて亡くなってしまうのだ。

時代背景は何時なのか不確かだが混沌としたリオの中心街、万引きをした容疑者は警察官によって簡単に射殺されてしまうし車道で横たわる母親の為に救急車を呼んだりする群衆も居なく通り過ぎていくだけだ。ましてや残されたジョズエを気にする人は何処にもおらずジョズエは止む無く駅の構内に寝どまりする羽目に、。

それを見かねたドーラがジョズエを連れて自宅へ帰る。そこでジョズエが見たモノはとっくに父親宛てに投函されていたと思った母親がドーラに口述した手紙だった。流石に焦ったドーラ、、そしてその手紙の宛名へ向かってジョズエと二人父親探しの旅に出るのであります。

なかなか打ち解けないジョズエに胡散臭いドーラと言う二人の珍道中でヒッチハイクでトラックに乗せて貰ったり長距離バスに昼夜揺られたりとリオからどっちの方向へ向かっているのかは不明だったが広大なブラジルゆえそう簡単には目的地へは辿り着けない。映画の中心部分はこの旅路だが終盤になってやっと父親がいる筈と母親が残した住所へ辿り着くのだが其処にはもう父親は不在、別の住人が住んでいる。

どうも宝くじに当たったらしく近所の酒場へ入り浸りすっかり所持金を無くし家も売って何処か別の場所へ越して行ったらしいと判る。途方に暮れるドーラ、やっとの思いで此処まで来たのに旅はまだ続くのだ、。

そんなお話だが二人の描写が実に現実感があって素晴らしい、、ドーラはもう若い訳じゃないし映画界のスタンダード或いはブラジリアンから見てもそんなに魅力的でもない、性格だって何処となく一癖ありそうで果たしてこれじゃジョズエに良い影響は与えられないだろうと思わせる。でも終盤思いがけない展開になりドーラは夜が明けきらない中、長距離バスに乗って一人リオへ帰って行くのです。