”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

プッチーニ ”蝶々夫人” (19年)

メトロポリタンオペラで公演された”Madam Butterfly”、演出者にアンソニー・ミンゲラの名前を見付け今回初めて3時間超えのフル公演を最後まで堪能した。ミンゲラ監督はこれまでに”イングリッシュ・ペイシェント”等の劇場映画で高評価を得ているがそんな監督がオペラの演出まですると言うのが驚きだった。

 

でも待てよ、、確か2008年には54歳の若さで亡くなっているのだ、それが2019年に公演された”蝶々夫人”の演出が出来たんだろうか?ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で収録されたのが2019年の11月だったハズで死後10年が経過しているぞ。

 

まあオペラ歌劇はこれまで嫌いではなかったのだがなかなか見るチャンスがないのが現実で今回だってやっとこさWOWOWが有料配信してくれた。WOWOWの解説にはこう書かれていた、、;

 

日本を舞台にした泣けるオペラの代表作。METの中でもひときわ輝く伝説的プロダクション、東洋美を凝縮したアカデミー賞受賞監督A・ミンゲラの幻想的な演出は必見。

鏡張りの天井に映る影と鮮やかな衣装のコントラスト、ヒロインの心理で刻々と変わる幻想的な照明、日本の文楽人形に着想を得た渾身の演出は東洋美を凝縮させたまさに夢の世界。本作には、故ミンゲラが演技指導をしている貴重なメイキングもあり、その中で「愕然とするほどの悲痛を描きたい」と話す彼が目指したものに胸を打たれる。

 

と書かれておりもうオレがとやかく言う必要はない、、それ程に素晴らしい舞台劇であった。歌唱は全てイタリア語だが日本語の字幕が入るので意味は全部判る。それにしても出演者全員の歌唱力に圧倒されてしまい見終わったこっちもかなり疲れた。

 

蝶々夫人に扮していたのがホイ・へー、ピンカートンにはテノール歌唱のブルース・スレッジと恐らくその世界では第一人者なんだろうが其処まではオレは詳しくない。でも舞台に釘付けされトイレ休憩も忘れて3時間半を楽しんでしまった。

 

何と言っても一番知名度の高い曲目は第二幕冒頭に歌われる”Un bel dì,vedremo(ある晴れた日に)でこれが最大の見せ場である。歌詞の意訳は、、;

 


www.youtube.com

 

 

ある晴れた日に、私たちは見るの
一筋の煙がたつのを
水平線の遠くに

そして そのあとに 船が現れるの
そして その白い船
港に入り あいさつ(の空砲)をとどろかせます

 

アメリカへ帰ってしまったピンカートンの帰りを待ちながら高台の家で遠くに見える港を見下ろしながら蝶々夫人が胸の内を歌うアリアは何時の時代に誰が歌っても感動出来る名曲ではなかろうか?

 

実はボクがこよなく愛するイギリスの刑事ドラマで若い頃のモース警部を描いた”刑事モース、オックスフォード事件簿”ってのがある。そのシーズン1の第一話で挿入歌として使われているのだ。副題にも”ある晴れた日に”と付けられているのだが元有名なオペラ歌手が最後の舞台でこれを歌う、、それが舞台袖から眺める刑事モースと重なるようで実に素晴らしかった。恐らくプロのオペラ歌手の吹き替えだとは思うのだがその場面はYoutubeにもアップされておらず今だに誰か判らない、、。

 

ともあれ素晴らしいオペラに大満足した一夜でありました。