”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

“マイ・ニューヨーク・ダイアリー″ (20年)

この邦題じゃオレにはちっとも鑑賞意欲が沸かない、、何処となく”真昼の情事”、暴露モノって雰囲気だし、、っでそのまま録画されていたものを内容を確認する事なく放り出してあった。でもお気に入りの英国ドラマも昨日シリーズ3が終わってしまい映画も食指をそそるものが無くコイツを見始めた。

そしたら原題が”My Salinger Year”だとさ、、こりゃひょっとしてJ.D.Salinger に関連するお話しでないかい?ボクら世代で少なからずともアメリカ文学に親しんだ読書ファンには”ライ麦畑でつかまえて”の作者って事は百も承知だ。こりゃ見ない訳にはいかんぞ、そして1時間40分後、かなり満足して見終わった。

 

映画の元ネタになっているのはジョアンナ•ラコフと言う作家志望の若い女性が2014年に書いた”サリンジャーと過ごした日々”である。実際に経験した彼女のお話でカリフォルニアから遥々ニューヨークへやって来たジョアンナ(マーガレット•クリアー)が出版社に採用され社長のマーガレット(シーガニー・ウィーバー)の元で鍛えられていき最終的には独立してしまうサクセス•ストーリーなんだが、、。実社会では人嫌いで知られインタビューは勿論、人前にも出ないと言われそれが伝説化していたサリンジャーご本人がその彼女に多大な影響を与えるのである。

マーガレットが奮闘している出版社はマンハッタンに拠点を置く古手で信頼の置ける会社で大物作家殿の代理人としてサリンジャーやアガサ•クリスティもお得意さんだ。その出版社気付けでサリンジャー氏へのファンレターが大量に寄せられて来る。ご本人は一切それを読みもしないし目も通さない、そんな事にも対処するのが出版社の役目でジョアンナが担当して出来上がった書式で返事を出すように言い付かる。

作家志望のジョアンナとしては本を読んだ読者がいったいどんな感想を抱くのか興味津々で毎日そのファンレターに対応するのが楽しい、、しかし彼女自身はサリンジャーの作品は読んだ事がないのだ。劇中、冒頭から中盤までそんなジョアンナの奮闘ぶりが描かれて行くのだがある日、マーガレット宛に入った電話、それがかのサリンジャーである。それをきっかけに電話で話すようになったジョアンナは彼から作家志望者としての心構え、題材を探し毎日を過ごす方法など基本的な作家としての心得を学んで行く、、。

現実社会では2010年に91歳で生涯を終えたサリンジャーなので当然、映画の背景はそれより断然前の事になる。チラッと画面に入るサリンジャー氏は断然姿も声も若いのだ。

他にも色々な映画で作者、出版社、印刷元、販売元の相互関係が描かれるケースがあるがこの映画では有能な作家を発掘するのは出版社の仕事、そして作家の代理人として執筆された書籍が店頭に並ぶまでの複雑な交渉ごとから継続して執筆を依頼し販売して行く使命がある。そんな実情を垣間見るだけでも読書好きには面白かった。

 

確かに小品ではあるがジョアンナを演じたマーガレット・クリヤーが初々しくて共感が持てる。気になって調べたらなんて事はないアンディ・マクダウェルのお嬢さんだった、、言われてみれば似ているよ、。