”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

翻訳の妙 by Sankei

これは昨日13日に産経新聞に掲載された記事だ、、コピペも出来ないしそれは著作権の侵害になるのでせっせと要点を書き出すと、、;

日本で外国産の映画を字幕付きで公開するようになったのは昭和6年(1931年)公開の映画”モロッコ”からだったらしい。主演はマレーネ・ディートリッヒ、現在では殆どの洋画が字幕で公開されると言う事で(これはちょっと疑問符、でも近年は確実に公開される数は吹き替えに取って代わられそうな、)字幕翻訳家の戸田先生曰く、日本国内では”正確さやタイミングなど全てが世界一の字幕技術を誇っている”そうだ。

 

f:id:guch63:20200213113626j:plain


そんな書き出しなんだが今度は逆に邦画を外国で上映しようとする場合、大きな言葉の障害が立ちはだかる。そんな映画界の現状で今年のオスカー受賞作品、韓国の”パラサイト”はそれを見事に打ち砕いたそうだ。格差社会を見事に痛烈批判しながらコメディやホラーの要素を見事に取り入れている由、。

彼方のメディアはこの英語字幕を担当したダルシー・パケットさんの功績を大きく指摘している。彼は過去20年に渡り韓国内で映画評論家、俳優としても活躍して来ており今回は英語圏の観客に充分配慮した翻訳が随所に見れるようだ。

早い話、字幕の質が向上し米国の観客が違和感や抵抗を感じないようになれば良い訳でこの映画に際してはその字幕の貢献度が非常に高かったと言う点に落ち着くらしい。

日本での事例を思い出せば川端康成さんが受賞したノーベル文学賞も文学研究者だったサイデンステッカーさんによる格調高い英訳があったればこそ世界中で広く読まれ、称賛された大きな理由であったのではなかろうか、、?

 

f:id:guch63:20200213113653j:plain

 


と記載されているのだが、、過去に邦画の英語字幕版を何度となく見ているが”なるほど、そう来るか?”と言うような妙訳にも数多く出会っている。同時通訳でもそうだが”mother tongue”と言われる母国語を語るのが常道で幾らバイリンガルでも聞く耳第二外国語ってのが一般的だ。字幕の場合は瞬時意訳を求められる訳じゃなくそれを短く端的に決められた字数でタイムリーな翻訳をするのが腕の見せ所だ。

その訳には文学的な配慮や格調高い文体にする必要はない、、無論映画の内容にもよるが肝心の脚本を越えちゃったりしたら問題だし、、シェークスピア劇を如何に平坦な文章で観客に理解し易く字幕を付けるってのは恐らく至難の技ではなかろうか?そうなると今度はターゲットに設定した観客に受けそうな訳が一番求められる。

もうかれこれ10年以上も昔になるがうちのペット達が通っていた獣医さんがブリスベンにあって若い日本人女性が勤務していた。仕事を離れオーストラリアの両親代りにもなっていたがいよいよオージーと結婚する事に、、式で司会を頼まれてしまい日本から遥々やって来られた本当のご両親がどうしても出席の皆さんに挨拶したいと、、そこで私と打ち合わせをして”原稿は1ページ限定ですよ”、、っと伝えてあったのにもかかわらずお父さん、感極まって原稿には書かれてない事にまで言及されてしまった。

司会者は壇上で困ったちゃん、、もうご本人は涙ながらで止めようにも止まらない、、しかもそれを同時通訳するだなんて、。それで止む無く最後にオレの奥の手、、” Hi, everyone, what he had just mentoined was JOKE, please laugh !! ” (字幕:皆さん、たった今、新婦の父が喋った事は全部冗談です。笑って下さい)とやっちまった。 これには会場内の総勢50人を超す出席者から拍手喝采、大爆笑。喋ったお父さんは”うん、オレそんな冗談言ったっけ?”みたいな顔で横に佇んでおられた、、。

お父さんには悪かったがちゃんと顛末は説明し了承して貰った、実はこれは大分古い話だがある映画評論家がさて誰だったか(?)、ハリウッドの大物俳優の通訳として壇上に立ったが彼のスピーチが長く、なかなか終わらなかった、、そこで咄嗟の事だったらしがこの苦肉の策で会場に詰め掛けた観客が大喝采を、、ご当人は長々と喋ったのに僅か一行かの短い訳でこれだけ観客に受けたのはキミのお陰だよ、”素晴らしい翻訳をありがとう”、と感激しきりだったらしい、。

それの応用でした、、まあコイツのお陰で窮地を脱したのは一回やそこいらじゃなかった。映画雑誌、”スクリーン”で読んだ記事が実際に役に立った好例って事でした。即ち、翻訳にはタイムリーさが大切なんだわさ。