”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”海を飛ぶ夢”(04年)

全編スペイン語の映画で主演はハビエル・バルデム、原題は”Mar adentro”(内なる海)で英語表記だと”The Sea Inide”にそれが邦題となると”夢が海を飛んでしまう”、、本編を見ればそれもありかな?でも解釈が違うし本国からは文句は出なかったんだろうか?

 

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お話は実在したラモン・サンペデロの手記が元ネタでそのタイトルは”地獄からの手紙”と言う。うん、確かにそんなお話があったっけ、これは当時かなりショッキングな手記、そしてそれにまつわる裁判と顛末が報道された記憶がある。

主演のラモン(H・バルデム)は船乗りとして世界各国を回っていた。その彼が25歳の時に海へ飛び込み浅瀬だった事から顔面を海底に叩きつけ背骨を損傷、首から下が動かないマヒ状態に。それから26年が経過して献身的な介護には支えられているラモンだが自身の運命を決めるべく尊厳死を選ぶのだ。

その法廷へ直訴すべく準備を進める中でNPO法人の弁護士、フリア(ヘレン・ルエダ)と知り合い彼の主張をまとめて裁判所へ提出する資料を収集する為に彼の家に投宿する事になる。更には彼がテレビ出演して尊厳死について語った事に感銘を受けた子連れのロサ(ロラ・ドウエニャス)が自宅へ押しかけて来て彼の面倒を看たいと申し出るのだ。こうして二人の女性、それに自分の兄、献身的に面倒を診ている兄嫁、甥に父親との交流が描かれて行く。

何時しかラモンとフリアは互いに好意を寄せ親密な関係を作っていくのだがラモンの法廷での審議中にフリアが発作を起こして倒れてしまう。実はフリアも難病を抱えていて次第に認知症が進むと聞かされたラモンは途方に暮れる。フリアもラモンと同様に尊厳死を見据えていた事が判るのだ。

ラモンが書き残した手記、詩をまとめて出版すべく準備を始めるフリアは彼の手記が出版されたその日を選んで二人で尊厳死を、、と語りあかすのだが出版元を奔走し忙しくしている間にも彼女の病状がどんどん進んでしまう。そして手記が出版された時にはもう誰の本で誰が出版したのかも理解出来ない状態に、、この辺りはダブルパンチの悲劇に襲われたラモンが本当に気の毒だ。

そんな衝撃的な展開に見ている方もビックリだが首から下がマヒしている状態では自分では何も出来ないのだ。この辺りの演出は見せる、、夫々の立場から賛成、反対もあろうが最終的には自分の判断が一番重要だ、でもそれが遂行出来ない場合はどうする?と問いかけて来る。このパワーフルなメッセージがこもった映画は見終わってから知ったのだが公開当時、ハビエル・バルデムベネチアヨーロッパ映画賞等で主演男優賞を受賞しているし作品もアメリカのアカデミー賞ゴールデングローブ賞の外国映画賞部門を獲得していた、。そんな名作だったとは知らぬはジジイばかりなりけり、、。

実は前日に友人の訃報があったばかり、、それもクラス一の優秀なヤツでただ一人仲間内から医者になった秀才だ。その彼が3年ばかり前に発症したのが多系統萎縮症だった、、その病名の通り筋肉が萎縮し、最初は手足が不自由に、最後は食事も出来ない状態だったようだが彼は医者として担当医と相談を重ね胃ろうなどの延命治療は一切受けなかった。確か7月の28日が73歳の誕生日だったのだがそれが帰らぬ人に、、最後にラインでやり取りしたのはもう一年以上前になる、友よどうか安らかに。

 

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