”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

Come back, come back to me

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このフレーズ、日本語だとさしずめ“帰って来てヨ~”だが洋画では決定的に印象深く且つ最高に効力の高いフレーズである。

有名なところではかの“シェーン”に向かってあのジョイー君が叫ぶ一言、“Shane, Come back!!” この後実は“ママも帰って来て欲しいんだよ、、”と続くのだが国内でTV放映された時でもこの部分だけは吹き替えなしの粋な配慮がなされた。確か解説されていたのは淀川先生だったと記憶しているがやはりこの名場面、ナマの声、イントネーションで味わいたいではないか。

後年、“Lover Come Back”と言うロック・ハドソンドリス・デイ黄金コンビによる同名映画もあり”恋人よ帰れ“と言う邦題も付けられていた。更にこの邦題を延長すると”恋人よ帰れ!わが胸に“と言うビリー・ワイルダー監督の秀作もあった。此方の原題は”The Fortune Cookie”と言って何とも愉快な傑作だが此方もかの黄金コンビ、ウォルター・マッソウ&ジャック・レモンである。

上記ドリス・デイが劇中タイトルソングを歌っているが何と言ってもジャズのスタンダードナンバーで有名なのは”Lover, Come Back to Me”である。オスカー・ハマースタインが歌詞をつけブロードウェイの”The New Moon“と言うミュージカルに使われたのが戦前1928年である。これは古今東西色々な歌手が持ち歌として収録もしているのでフレーズとしては誰もが知るものだろう。日本でも江利チエミ美空ひばりがカバーしているし何時の時代でもスタンダート曲として歌い継がれる名曲だろう。

映画のセリフに戻るが先日見た“つぐない”、このなかで主役のセシーリアに扮するキーラ・ナイトレイが愛するロビーに耳元で囁く“Come back, come back to me”、力強くかつ優しく囁くあの場面でのこのセリフ、男子耳元でこんな囁きを受けたらそりゃ奮起一番、何としても頑張って恋人の元へ帰りたくなるだろう、、。しかしその場面、図らずもついた妹の嘘の証言が原因で愛する人が逮捕されてしまう。そして引き裂かれた二人を襲う悲惨な人生が何とも切ない。映画はその嘘の証言をしたブラウニー(妹)が生涯をかけて償う訳であるが酷な人生、時はダンケルク撤退の戦火のなか償うも何も二人の人生は交わる事ない有様、心が痛むまさに贖罪である。

昨年のオスカーには作品賞を初め7部門でノミネートされ個人的には大変有望だと思ったのだが結果はベストオリジナル曲だけの受賞に終わってしまった。英国映画と言う結果か本国のBAFTAでは作品賞を含む何と14部門でノミネートされ作品、舞台装置の2部門を受賞している。

以前のミンゲラ監督の”イングリシュ・ペイシェント”(96年)、此方はオスカー大量取りだったが、同じような背景で描いた壮大なスペクタクルロマン大作。どちらも遜色ない出来である。やはり映画館で見る映画は良いものだ。制作側にもそれなりの敬意を払って見るのはファンとしてもエチケットじゃなかろうか、、所詮何を見るかの選択肢は我々側にあるのだから。