”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”マンハッタンに漂う”

イメージ 1原題は”Adrift In Manhattan”(2007年)、勝手に直訳して邦題を”マンハッタンに漂う”としたのだがまさにその通りのお話、全く期待もせず予備知識もないまま見初めてそのまま席から立てずに全編91分を”楽しませて”くれたクリーン・ヒットな映画であった。
 
手法的には良くあるもので何の関係もない登場人物が微妙に何処かで繋がってくる、、、”バベル”や”トラフィック”、、その他だがそう言えばイギリスの秀作、”ラブ・アクチュアリー”もあった。
 
映画は寒そうな冬のニューヨーク、カメラ屋に勤める若い兄ちゃん、サイモンが公園で盛んに望遠レンズを使っての撮影に余念がない。カメラ屋のオヤジには信頼されているようで高額なレンズを貸してくれたりするが寡黙で人と接するのは苦手な撮影オタク、、である。
 
偶然彼の被写体としてレンズに捉えられたのは美しいローズ(ヘザー・グラハム)、、何処か悲しげでコーヒーを持つ手も寂しげ、彼女の寂寥感溢れる姿を追っていると何時の間にか自宅まで追って来ている。その自宅前からも執拗に彼女の姿を追うサイモン、、。
 
一転して場所は眼科の診療所、、其処を訪れる患者のトマソ爺、向かい合う医師から数ヶ月のうちに視力を失うと宣言される、、今のうちに家族そして知人に連絡を取りそれなりの対処を勧められる、、そしてカメラが反転してアップで医師の姿を捉えるのだが、、それは昨晩サイモンが盗撮していたローズである。
 
こんな感じで映画はトマソの勤務先へ、トマソは博学で趣味は絵画だが家族もなく結婚さえした事がない、天蓋孤独の身。それが何れ視力を失うと宣言されて動揺は隠せない、今のうちに好きな事をやってコンサートへも行きたいし、、。彼の同僚、イザベルは彼に好意を寄せているのだが何も打ち明けられない、それがある日トマソからクラシック・コンサートへ同行して欲しいと律儀な手紙を貰う、そして交際が、、。
 
ローズの憂いある表情、寂寥感、、それはいったい何処から来るのやら、ある日訪ねて来た元夫、マーク(ウィリアム・ボールドウィン)の登場で明らかになって行く。8ヶ月前に二人の間に居た小さい男の子が自宅の窓から転落して事故死していたのだ。それ以来夫婦は別居、ローズは今だにその悲劇を引きずっており自分の殻に閉じこもったままなのであった。
 
主役になる登場人物は以上。ローズを演じるヘザー・グラハムは”オースティン・パワー”などに出ていて印象はあるのだがこの映画では完全に主役級、元夫のウィリアム・ボールドウィンを完全に食っている。映画の出だしの公園内での表情、サイモンじゃなくてもこりゃ”惚れちゃいます”、、彼女のお蔭で最期まで退屈せずマンハッタンの人間模様を堪能出来た。
 
映画はサイモンが自分で盗撮した写真の裏面に勤務先カメラ屋のスタジオ名をスタンプして彼女の郵便受けへ、、それを開封したローズはビックリ、これはストーカーじゃないかと警察にも電話するのだが裏面を見て又、驚く、、そしてカメラ屋を訪ね主人を問い詰める、、。おやじはすぐにサイモンの仕業と気が付くのだが本人からは反応がない、おやじにはもう撮影は止めろと命じられるが気が付くとサイモンは又、ローズを追っている、。そんな若いサイモンの情熱のなせる技なのか自分もまだ人に想い憧れられるんだと気付かされたのか次第にローズも自分の殻から脱皮して行く事が、、元夫とも互いに攻め合うだけじゃなしに会話が出来るように、、。
 
残念ながら日本では一般公開は勿論、DVD化もされていない、、、これは見過ごされている限りなく秀作に近い良作じゃないかと思うのだが、、。おい、配給元の担当者、ナンで日本で公開しないんだ?直接スルーしてテレビ放映でもいいじゃないか?そこいらの低俗お笑い番組や2時間枠ドラマより格安で入手出来、しかも抜群の出来ですぜい。