”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”海を渡った花嫁たち”、、

これは2012年最後に見た映画かな、今年は1月4日に映画館で”戦火の馬”、、これにはピーピー泣かされたそして最後に又、今度はボロボロに泣かされもう年内は何も見るまいぞ、、。
 
英語表記の原題は”Brides”、、2004年に制作されたギリシャ映画である。主演はこの二人、、
 
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デミアン・ルイス(ノーマン)とビクトリア・ハララビドー(ニッキー)   →
 
直訳すると”花嫁達”なのだがそれじゃ余りにも端的過ぎるので”海を渡ら”せた、、。
 
時代は1922年、、その背景はギリシャがトルコと戦った希土戦争でギリシャが敗北、成人男子は戦争に駆り出され貧しい生活を余儀なくされたニッキーの生家、小さな島、では何人もの娘たちを食べさせる余裕もなく遥々新天地アメリカへ”メール・オーダーブライド”として送り出すところから始まる。ニッキーの妹が先の航海でアメリカへ渡ったのだがどうにも馴染めずこの島へ帰って来る。そしてその代案として今度はニッキーが相手の写真一枚を手に海を渡る決心を、、、一方のノーマンはトルコ国内を回る写真家、各地で構図を選び写真を撮っては本国、アメリカの雑誌社に送っているのだが思うような仕事先が見つからない。これ以上外国にいても仕事はないし結婚はとっくに破綻しているのだがやむなくアメリカへ帰る決心をして大切なカメラを売り払ってしまう。
 
この二人が乗り遭わせた船がSSキング・アレキサンダー、其処にはギリシャからはニッキーを初めオデッサやその他ロシアの地から総勢700人からの”花嫁”さんが乗り合わせている。全員まだ会った事もない未来の”夫”の写真を胸にアメリカへ渡る決心をした娘たちである。
 
アメリカではこの頃、ワシントンで軍縮会議が開かれており日本の太平洋と東アジア諸国における活動を制約する動きが活発化、又、移民関係では当時ロシア革命十月革命、ロシア内戦などで短期間にロシアからの移民が急上昇、そんな背景があり花嫁さん候補はアメリカへ渡る事が比較的容易だった。
 
こんな背景を知ると余計映画にも引き込まれる、、最初この映画を見た時は何で行きたくもないアメリカへ渡るのかな、、、とか良くそんなに沢山の移民を受け入れるもんだ、、と漠然と考えていたものだ。そう言えばこの頃コルシカからドン・コルリオーネ一家が遥々ニューヨークへ向かっていたんじゃなかったか、、。
 
映画のほうは裁縫が得意のニッキー、、シカゴで洋服屋を営むギリシャ人に嫁ぐ予定、をノーマンが見付け船内で行なわれるステージ向け衣装を縫う仕事を紹介する。彼のほうは700人からの花嫁さんの花嫁衣裳姿を個別に記念写真として撮る為に船内で忙しくなる。そんなでギリシャからアメリカへの航海が始まるのだが、、、中にはロシア人でこのメール・オーダーの元締めみたいな悪どい親父、、スティーブン・バーコフが美人局をやって花嫁さんを船長や他の乗客に世話をしたりとエピソードが入るのだが、、、基本はこのニッキーとノーマンだ。
 
最初出合った時にノーマンが”キミの出身地は?”と聞く、、それに対するニッキーの答えが”もう二度と見る事が叶わない土地よ、、”、、もうこの辺りから涙腺がユルっ、、感じ。更に初めて写真を撮る為に船内の”エコノミー・クラス”へ降りてみると、、、”花嫁衣裳が満開で野に咲く花フレークだ、、”とかの描写がある。二人には恋愛感情が芽生えノーマンはニッキーに”知らない人に嫁ぐ、、よりボクと一緒に来てくれ”、、と迫るのだが。この辺りは”日本婦道記”もさもありなん、、と言うようなニッキーの答え、”これはもうワタシ個人だけの問題じゃないのよ、、妹の名誉そして我が家の名誉の為にも途中で放り出す事なんか出来ないの、、”、、もうこれでユルユルッ、、て感じ。
 
そしてとどめは、、It's not a punishment to remember someone you love. The punishment is to forget.
”愛した人を想うのは決して罰ではなく、、罰は忘れようとする事なの、、”こんな胸を締め付けるようなセリフが満載です。ニューヨークの港へ船が入る直前にこの二人が交わす言葉、、この辺りはもうオロオロ状態でした、、。
 
画面は一転、今はシカゴの洋服屋のおかみさん、、お腹が大きいって事はもうアレから数ヶ月が経過、ご主人が”そろそろ店仕舞いすべ~、、”、、”わたしゃ働くのだけが取り得だよ~、、”で幸せそうな二人。家に帰ってタンスからノーマンがせっせと撮った花嫁姿の写真を出して見ているとその一番底にノーマンからの手紙が、、もうその内容は、思い出すだけで書けません、、ラストシーンは街角に立つノーマン、、雑誌売り場を見ると彼が船内で撮ったニッキーの顔写真が週刊誌の一面を飾っている、更にアップになると彼のネクタイピンはニッキーが別れ際に自分の右耳から外して彼の手に握らせたイアリングが、、、。
 
っで今年最後の映画をメシも食わずに見てしまった、、何時の日かこんな秀作が日本でも見れるようにならないだろうか?