”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

いざ豪州へ、

まだ外は寒い時節、地下一階にあって外部とは完全に遮断されている社員食堂で昼飯を終え自分の事務所へ帰ろうとしていると、、
 
“オーイ、亮次じゃないか?久し振り、元気か?”と廊下で呼び止められる。振り向くと人事部の課長で先輩の桐山さんだ。
“はい、お蔭さまで元気は元気なんですが、、”。“知っているよ、例の海外プロジェクトがボツになったって?”“それで腐っているんだろう、折角の新規開発プロジェクトだって言うのに、まあサラリーマンにはどうにもならないケースが多いし、、又、次回があるさ、今度誘うから一杯のみにでも行こうや”。
 
6年に及ぶ海外赴任から呼び戻されその後3年は決して快適とは言えない針のムシロのような職場での勤務、そこからやっと解放されての人事異動、海外事業部へ配属されて一年が経過した頃、提携先で資金を提供する筈の側があえなく他の事業に方向転換してしまい6人編成で設立された準備室チームは解散の憂き目にあったところだ。しかも当座は他の部署へヘルプとして派遣されるとか、18年も昔に配属された部署へ貸し出されるのもイヤだな、、と内心腐りきっていた頃だ。
 
そんな境遇でも朝から晩まで典型的なサラリーマン生活態度が染み付いている。朝も昼飯も社員食堂、夜は接待やら担当した仕事の出来栄えを確かめにと忙しい。そんなで2週間くらいが経過して桐山さんからお誘いの電話だ。帰りに近くの飲み屋で会う約束をさせられいそいそとその場所へ、。
すると桐山さん、
“その後どうだい、派遣部署決まった?”、“そりゃ、先輩の部署で決める事じゃないんですか?”“まあ最終的には人事課で承認するという事になるんだが、今は課長、部長を交えて部署同士で根回しの最中じゃないかな”
“じゃ、此方がどうのこうのと言える立場じゃないですよね?”“うーん、結果的には何処の部署でキミを欲しがっているかだな?”
 
そんなで近況報告やら次のプロジェクトの話で盛り上がっていく。飲み始めて一時間以上が経過して、
“ところで亮次君、改まって聞く訳じゃないけど、、そんなに海外のプロジェクトを手掛けたいならいっそ他社へ移ってやってみる気はあるかい?”これにはビックリだ、人事部の課長が転職を勧めるのか?
“そんな事を急に言われても、、もうこの会社で勤続18年を越しましたからね”
“そりゃ判っているんだが、、実は私が毎回出席している人事担当者で構成する異業種文化交流会みたいなものがあってね、其処である法人の人事担当者から頼まれたんだよ”
“どんな内容なんですか?”“相手は大手の企業なんだがオーストラリアの北東部の海岸線に広大な土地の取得を目指しているらしい、其処へ総額200億円を投入して総合リゾート開発をやりたいと言う趣旨なんだ”“どうだろうこんな話は、先方はどうやったのかは知らないがキミに目を付けていて先日の会合でそれとなく私に探りを入れて来たんだよ”、
“えぇっー、まさか先輩がコイツが良いですよ、なんて言い出したんじゃないですよね?”“違う違う、そんな事をしたら俺のクビが飛ぶぜ、それだけは信じてくれよ”
“はあぁー、でもそれってヘッドハンティングって言うんですか?”“言葉は悪いがそんな感じかな?、でもそんな新規事業を企画するとしても自社にそんな逸材がいなけりゃそうやって探すしかないだろうな、、まあそんな時の神頼み的な交流会なんだがね、”
 
まあ世の中バブル期の真っ最中、土地の値は上がるし銀行だって担保をそこそこに大型融資のオンパレード、土地神話に裏打ちされた“日本株式会社丸”は順風満帆な航海を続けていた頃である、。