”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

口笛を吹かせる映画

一昨日の続きで”口笛”について、このローレン・バコールについては何処かに書いた記憶はあるのだがその肝心の記事を探しても出て来ない、自分でブログに書いていながらそれが何処だか判らないと言うのは誠に情けないものだがもう探すのはやめてもう一度書く事にした。
 
これはローレン・バコールのデビュー作、”脱出”(44年)での一こま、お相手はボギーことハンフリー・ボガードで僅か20歳の事である。
 
この”貴方は何もしなくても良いのよ、でも口笛は吹けるわよね、スティーブ、、唇を閉じてふっと吹くだけよ、、”ともう”お色気”満点のセリフじゃないですかぁ?映画史上にも残る有名な一シーンですがこれだけを撮るのに20回近いテイクが必要だったとか、。今でもこのシーンが忘れられず、口笛が出て来る映画と言うとどうしてもこれを思い出してしまいます。
 
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此方がそのデビューの頃、ハンフリー・ボガードを相手に”口笛くらい吹けるわよね?”と言ってたローレン。彼と20歳以上の差をものともせずに結婚する前年でした。
 
ニューヨークで生まれ育ったのだが5歳の時に両親が離婚、在学中から将来はステージに立つダンサーを目指していたようだが結局演技に方向転換、高校を出るとオフ・ブロードウェイで修業する事になった。同時にモデル業にも進出、雑誌のカバーを飾ったところをハワード・ホークス監督の奥さんの目に留まってオーデションを受ける事になる。
 
そして19歳にして”脱出”(原題は”To Have And Not Have”でボギーの相手役に抜擢され、それからは一連のボギー映画、ミステリー&ハードボイルドに出演、脚光を浴びる事に、。二人の結婚生活は57年にボガードが亡くなるまで続き、ハリウッドでは”映画界最大のロマンス”として語られ続けている。
 
 
80年代初めに自伝を書き上げそれがベストセラーに、、その日本での翻訳、出版契約の為に出版社の招待で来日、都内の某ホテルへ、、、。確か83か84年の頃だと思うのだがニューヨークからの長いフライトでグッタリお疲れでホテルへチェックイン、出版社では気を利かしたのかその晩は会食もなく誰もお付き合いもせずそのままお一人でどうぞごゆっくりと、、、。肉体的には疲れていてもホテルの狭い部屋に一人じゃ飲むっきゃない、飲みながら少々呂律の回らないあの特徴あるハスキーボイスでルーム・サービスへ”もっとお酒を持って来て頂戴な~”と掛ける。電話を受けた方はこの独特のハスキーボイス、、しかもニューヨーク訛りで何を言われているのか”判りましぇーん”状態、、一生懸命聞き取ろうとしたのだがどうにもこうにも、、意志の疎通が出来ず遭えなく切れちゃったローレン嬢、電話口で”じゃ支配人を呼びなさいよ”、、、で困った交換台、言われた通りその電話を支配人室へ転送する事に、、その電話に応対したのがナンとこのおっさん。
 
”スイマセン、、Gさん、〇〇号室のお客様が支配人を呼べと多少お怒りの様子で、、、”当時でも一旦交換台に客室から電話が入ると即座に宿泊者名がモニターに表示されるようになっていた、ところが交換台は若い園ゆえ、名前の前に”VIP ローレン・バコール”とは表示されていてもそれってダレっ??の世界、ハリウッドの俳優さんだとは思いもしない(別の注意書きにはちゃんと記載されているのだが、其処までは表示されない)。”お客様はバコール様と言うVIP表示の方なんですが、どうしましょう??”予約が入った時点でコチトラ知ってはいたのだがこりゃチャンス到来じゃないか、、で”良いよ、此方に繋いでください。処理しますから”もうこの時点で胸がワクワク、、心臓パクパク、、。
 
早速電話口へ出ると、、、”もうルーム・サービスは話が通じないし一体このホテルはどうなっているの?”とお怒りモード、、もうこうなるとホテルは平身低頭、、即、ご指定の銘柄ウィスキーと共に人間クリエーだっ、自分ですっ飛んで行きましたよ。バコール様の元へ、、、そして彼女のお部屋で二人っきりで20分、、お酒を注いで宥めすかして落ち着かせて、、天にも昇るような至極の一時を過ごさせて貰いました。部屋を出る前にこのデビュー当時の事をご本人からもちゃんと聞きましたよ、やはり後にも先にもこれが一番印象深い”口笛シーン”だそうな、、バコール様は遠い日本にもこんなデビュー当時の事を覚えていてくれボギーとのシーンを振り返った事が大変に嬉しかった様子、もう上機嫌でその後数日の滞在も大満足されて帰国されました。
 
ルーム・サービスの担当者も交換台も余りに行ったきりで帰って来ないのでこりゃクレームで大騒ぎになっているんじゃなかろうかと大分気がもめたそうな、、ちゃんと”日誌にもバコール嬢から苦情の電話あり、、その処理はGさんが担当して処理済み”と記載されていたのだがGは一体どんな処理をしたんだろう?と暫らく話題になったそうな、、アハハっ、それは秘密。
 
後日出版社の担当者曰く、”滞在中、何かあったんですかぁ?今回は契約での来日で普段はかなり我儘と聞いてましたので我々も全員覚悟して対応したんですよ””今回の滞在は大変ご機嫌が良くて何でもスンナリOK,ホテルも最高だったって言ってましたが、、何か聞いてませんかぁ?”、、アハハっ、、そりゃ企業秘密じゃけん。