”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

口笛を吹く映画、、

口笛=Whistleblow=ローレン・バコール=You Know How To Whisle Don’t You、 Steve(とこれは彼女のデビュー作、”脱出”(44年)での有名なセリフ)と連想するのだが、、それがWhistleーblowerと変形すると今度は一転、”内部告発者”となる。知らん顔して口笛を吹くヤツから来ている気もするがこのジャンルは事実に基づいた映画が多い。有名どころでは”エリン・ブロコビッチ”、ジュリア・ロバーツが好演、新米弁護士として垂れ流しを続ける大企業を相手取り巨額の訴訟問題を起こし勝利するまでを描いた秀作だった。他にもタバコ産業を暴いたものから政治スキャンダルまで、、色とりどりある。
 
イメージ 1昨晩見たのはこれ、邦題は”トゥルース 闇の告発”(10年)と言う”口笛吹き”の映画としてはちょっと毛色が違った。
 
レイチェル・ワイズが好演していて各種映画賞ではノミネートもされていた。アメリカはネブラスカが最初の舞台、そこで婦人警官をしているキャサリンレイチェル・ワイズ)は離婚で子供の親権を父親に持っていかれ昇級にも失敗して昇給の見込みもなく上司に食って掛かる有様。上司からボスニアへ国連平和部隊の派遣員として半年も赴任して来れば潤沢な給与が支給されるぞ、と言われ思わず応募してしまう。
 
舞台は一転してボスニアアメリカ軍駐屯部隊、国連の平和部隊は色々な国からの寄せ集め部隊なのだが給料が良いと言う理由だけで傭兵もどきの輩も来ている。そんな中で戦後の平和維持の任にあたるが犯罪があっても捜査権や逮捕権もなく、事情を聞いて現地当局に書類を提出する事しか出来ない。そのキャサリン、とある事件の現場検証で女性の強制拉致問題に遭遇してしまう。
 
正義感と現役警官としての血が騒ぎ何とか真相解明にと奔走するキャサリンだが同僚、上司、そして上層部に市の当局さえもみんなつるんでいるような、、確かに戦後行く場所を無くした若い女性達はお金になるのなら酒場の給仕からホステス、、それらをきっかけにもっとお金を稼げる場所を目指していく、、それを提供する側もそんな内情を承知でみんなが知っていながら知らん振り、、必要悪と言いきれるのか、、。現に虐げられて働いている女性達も最初は穴倉みたいな住居をあてがわれ厳しい環境に置かれているが誰一人として裁判で証言しようとはしない。確かに最初は拉致され”ヒューマン・トラフィキング”と言われるように個人の意思とは正反対に連行されて来ているのは問題なのだが、、。
 
そんなボスニアの戦後が事実に基づき描かれていく”硬派”の映画だ。モニカ・ベルーチやヴァネッサ・レッドグレーブも出演、しかしアクションはないしミステリー劇とも違うしひたすらキャサリンが”闇の告発”に終始する毎日。個々の女性が拉致されたケース・ファイルを苦心惨憺集めて上層部に提出するのだが翌日には自分の首が飛ぶ始末、こりゃもう上層部も一蓮托生だ。上司との会話を録音して他の残されたファイルを最後の手段としてイギリスのBBC放送局(民放のテレビ局)へ送りつけるところで映画も唐突に終る。
 
最後のクレジットにその後の本人の所在、この事件全体がどうなったかが出て来るのだが多分こりゃ日本では公開はされないだろうな、、案の定邦題を調べたらDVDスルーでした。近代戦争後の当事者国の”戦後”に焦点を合わせた異色作、なのだがもう誰が敵で味方は誰なのか、、山中で口笛を吹いて山彦になって戻って来た気分と言ったらシツレイかな?