”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

さてホテルのサービスとは?

”過ぎたるは猶及ばざるが如し、”、日本には実に言い得て妙な言葉がある。昨晩見入ったドキュメンタリー番組を見ていて感じた言葉だ。番組の舞台はロンドンの”マンダリン・オリエンタル・ホテル”で我らロートルの元ホテルマンにはサービスかくあるべき、、と昔は香港にあった本店のサービスに関する精神論は新卒入社時から叩き込まれて来た。

イメージ 2前回東京でオリンピックが開催されたのが64年、諸外国からの訪問客を当て込んでのホテルラッシュ、、そんな中で都内に建設されたのが当時のヒルトン、オータニ、パレス、帝国(新館)、プリンス、、オークラ等などだった。当時はまだ西洋諸国のようなサービス・マニュアルなんてものは存在せず第三次産業の常としての実態は”叩き上げと経験値”っきゃなかった。その状況下、香港は距離的にも近くホテルとしては格上の有名ホテルが存在しそれらは伝統的なイギリス風サービスを提供する事で名声を築いていた。

イメージ 1そんな香港のカウルーン側(九竜)には”ペニンスラ”そして香港島側には”マンダリン”が双璧として営業中で競うように極上のサービス、施設を提供していたのだ。当然日本の新興ホテルとしては彼らのサービス振りを見極めたくて何人も派遣されたり長期研修生制度なるものまであったと記憶している。

そんな背景からこのドキュメンタリーでは最新の施設やサービスは一体どうなっているんだろう、と興味津々で拝見したのだが、、。要するに”良いサービス”、これが問題なのだ。例えばホテルにチェックインする顧客の場合、サイン一つでカウンターを離れ、部屋に案内される、、するとフルーツ・バスケットが用意されている。

そりゃ気分は悪くない、、其処までが顧客に対する格別なサービス、、しかしそんな物はセロファンの包みを開けて食べやしない、、そんな丸ごとフルーツ・バスケットより季節の物を少量で良いので切り分けで冷蔵庫へ、フォーク一つで冷たく冷やしたフルーツを楽しめる、、これがもう一段上のサービスだ。

しかし部屋のテーブルに”お誕生日おめでとう御座います”と書かれたカードはさてどうなんだろう?”オイ、待てよ俺の誕生日まで知っているのかよ?”とまあこりゃ個人差はあるがワタシはこんなサービスには完全に引けちまう。仮に誰かと一緒だったらどうするねん?それにこれはもう禁断の個人情報公開ではないのかい?

イメージ 3このドキュメンタリーでは主にコンシェルジュと呼ばれる人たちの対応が描かれていたのだがその中でガーデンウェディングを挙げるカップル、両親からのささやかなサプライズらしいのだが子象を連れて来て欲しい、、とか。コンシェルジュは街中、そして最寄りの動物園まで手当たり次第でやっと1時間だけ調達、派手にペンキを塗りたくり挙式を挙げたカップルにも大喜びされたらしいのだが、、個人的にはコイツは絶対にNO、NOだ。これはもうお金さえ払えば何でもやりまっせと言う”サービス、サービス”になってしまい飲食を扱うホテルあるまじきな対処と感じるのだ。

もっと一般的な状況を考えると、例えばレストランで水が欲しい、手を挙げればさっとウェイターなりが飛んで来て注いでくれる。これはもう100点満点の対応だ、、しかしテーブルを片付けている最中、下げものを手にしたウェイターに頼んでもその場に手にしたものを置いていく訳には行かないのでちょっと戻るまで時間が掛かる。本来はそのウェイターなりが他の手の空いたウェイターに指示して持って越させるのが一番なんだがこんな時でも頼む側でも周りの状況を見ながらやらないと”ナニさ此処は水一つ持ってこない”となるのである。従って良いサービスを受けるには頼む側にもそれなりの見極めが必要と言うのがワタシの持論なんである。何にもメゲずに言いたい放題、”すぐやれっ~、”とか”ち~が~う~だ~ろ~っ”、式のお客さんはもうクレーマーもどきでなかなか良いサービスに巡り合わない、それは保証出来る。

良く”このお店はサービス良いのよ”と言うのは金銭的にサービスするって事ではなく”迅速、的確、親切、丁寧”に尽きる気がする。これは伝統的に日本では旅館の対応に繋がるのだがホテルに置いては女将が部屋へ出向く事もレストランで自己紹介する訳でもない。要するに”着かず離れて距離を置いた対応”に終始して欲しいのだ。

究極は”ナニもしてくれないサービス”、これが何にも勝るケースだってある。無論施設のハード面でシャワーのお湯の出が悪いとかぬるい、、電話が繋がらないやベッドがキーキーする、、冷暖房の音とか冷蔵庫がウルサイ、なんてのはもっての外ではあるのだが、。このドキュメンタリーを見て、みんなご苦労さんだな、昔も今もそんなに変わってないじゃないかと言うのが率直な意見、。

自分でもアレはやったしこれもやった、、次はどうしたら喜んで貰い、永く記憶に残るサービスが出来るんだろう、、と夜も徹して知恵を絞った事もあったっけ、、。ああ、オレはもうホテルマンじゃないのだもう心配するのは止めよう。