”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

ファンレターを受け取る立場になった事、あります?

イメージ 1

映画ファンなら誰しも“スクリーン”と言う月刊誌をご存知だろう。近代映画社の発行であるが遥か昔、おっさんが十代の頃にはもうとっくに刊行されていたような気がする。どちらかと言えば女性向きではないかと思うが少ない小遣いをやりくりして年間定期購入するほどに愛読していた。

それがひょんな事からアメリカへ行く事になり母親には雑誌も月遅れで追っかけて来るように頼んでおいた。当時は日本語で読める本や雑誌類も限定されていたのでそれこそ隅から隅まで読み尽していたのだがある日“読者のページ、映画評”(?)みたいなコラムがあって原稿募集中とか。そんじゃとばかりに一夜漬けで原稿を書き上げダメもとさ、と応募してみた。

確か原稿用紙2枚程度の短いもので写真も必須との事。内容は現在ニューヨークでは何が上映されヒットしているかみたいな表題だったような記憶がある。本場にいるんだからとばかりに字幕の出ない映画館でしっかり英語の勉強、休みの日には朝から何処へ入って何時の回を見てその足で次の映画館で何時から、、、と二本立てを3劇場回った事もあるので書く材料には困らなかった。

そしてすっかり忘れていた2ヶ月後、何とその応募原稿が採用されてテラスで微笑む写真と共に見開き、イヤ二分の一頁に掲載されているではないか。表紙のスターはオードリーだった事は間違いないがこれにはたまげた、、近代映画社からは掲載された後に連絡があって原稿料うんぬん、、当時はそんなものを銀行為替で送金して貰う訳にも行かないので日本茶缶と購読料、送料込みで手を打ったような。

そしてその翌月、くだんの居住していたアパートの一階の郵便受けへ手紙を取りに行ってみると、何とサンタクロースが半分配り終わったようなズタ袋が2個も壁に設置された私書箱型郵便受けからぶら下がっているではないか、、何だ郵便屋め、配達途中でタバコでも吸ってんのかよ。と思いつつ袋の中身を何気なく除いてみると何とこれが全部ワタシ宛の封書、葉書、カードやエアログラム(懐かしい)じゃないですか。これ又、びっくりして重い袋をふたつも提げてエレベーターに乗り部屋へ帰って取り出してみるとそれは“スクリーン”の記事を読んで遥々ニューヨークにいる一青年映画ファン宛てに送られたファンレターだったのです。中にはご丁寧にも写真同封や返信用切手(日本の切手じゃどうにもならん)やら口紅べったりの和紙やらしおりとか折り紙まで、、、この時初めてハリウッドのスター連中がどんな気持でファンレターを受け取っているのかそして私如きがこんなに貰うなら映画一本出て世界中から押し寄せるファンレターたるや天文学的数量になるだろうなと妙に感心してしまった。

確か合計で300通はあったと思う。最初はせっせと返信しなきゃ、、と書き始めたが返信用の住所がないもの、名前の記載さえないものや、トム・リプレーの如く必死で英文のサインを習得したようなものまで、、内容も千差万別、興味半分って感じで読み進んでは見たが最初の50通でもうウンザリ、、それではいけないと気を入れ直して結局最後まで(しかし翌日も翌日もズタ袋ではないにしろ配達されて来る)1ヶ月かけて読み終え最後にその中から女性3名、男性2名の合計5名を選んで文通を始めた。写真は兎も角、文面がしっかりしていてそれなりの字でキチンと自己主張している方々、映画と言う共通の趣味でもウマが合いそうな人達を選んだつもりだがその選球眼は確かだったようだ、、自己満足か。

結局その後数ヶ月で男女1名ずつが残りそのお二人とは結構長い間、主に映画が中心だがペンパルとして交際して来た。勿論4年後に日本へ帰ってからもそのお二人とは初めてお会いし再三映画談義に楽しい時を過ごさせて貰った事を感謝している。