”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ”

これはジョン・ル・カレが76年に原作を書いたジョージ・スマイリーを主役に据えたスパイものである。大分前から見たいなと思っていたのがやっと封切りされ、いそいそと日曜の午後、見に行って来た。油断は禁物だよ、、映画館前に長蛇の列、しかも何処かの老人ホームから団体さんで来たんじゃないかと思うくらいおじいちゃんにおばあちゃん、、見事に若いヤツはいない、、何か特別の企画でもあるのかな??で切符を買って判った、これを見る為に皆さん並んでいるんじゃないですかぁ、、久し振りにオーストラリアの映画館でビックリしたぜ。
 
もぎりのお兄ちゃんが”皆さん大丈夫ですよ、この上映館はこのシネコンで一番大きい劇場ですからっ”にホッと一安心、でも館内はもう8割から入ってる、こんな時は一人が一番、後方の真ん中何時もの席に着いて10分、ドンドン入って来る、、遂に最後は先程のもぎり兄ちゃんが出て来て”席を詰めてくださーい”、”空席はありますかー”とやっている。”女性一人なら此処が空いてるで~”とか”一番うしろならあと3席あるよ~”と掛け声が掛かり場内爆笑だ、日本じゃこれは絶対にあり得ないだろうな、、まあ年寄りは話好きだし、それだけ陽気なオージーって事か。
 
 
 
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イギリスのスパイものは数多くあるが対極に位置するのは007、此方はもう派手な所は一切なくひたすら地味系だ。ストーリーも冷戦時代とあってまさに超現実的、ホンモノのスパイもきっとこの出来にはビックリする事、間違いなし。
 
主演はゲイリー・オールドマン、原題の”ティンカー、テイラー、、”は古くからイギリスに伝わる子供の数え歌なのだがそれがタイトルに使われ、スパイの暗号名を表している。このウチの誰かがソ連から送り込まれたスパイでそいつを暴くのが本筋って事になる。
 
映画の始まりはあるエージェントが上司に呼ばれブダペストへ送りこまれる。任務はアチラの軍部将軍に会いイギリス情報部に潜り込んでいるスパイの暗号名を聞きだして来る、、と言う簡単なものなのだが、、それでスンナリ行けば映画は10分で終っちまうし、。その彼が現地で銃撃され任務は失敗、イギリス情報部は汚点を残してしまう。
 
画面は一転、情報部のお偉いさんが集まるなかスマイリー(ゲイリー・オールドマン)は早期引退を勧告され上司と共に情報部を去ることに、。そうして一旦は引退したかに見せてスマイリーにはこの裏切り者を探す重大任務を仰せつかる。そこからがこの映画の本領発揮、、、一言で言えば玄人さん向けの映画かな、先の年齢層の高い館内のお客さんは果たして何がどうなっているのか判ったかな??と余計な心配をしてしまう。過去と現在が微妙に入り組んでしっかり画面を見ていないと”ウン、これは何時だ??”となる。
 
原作が素晴らしいのでそれを忠実に再現出来れば良い映画になるハズだが、、これにはやはり脚本がしっかりしていないとダメだし撮影、音楽も切り離す事は出来ない、無論演技陣もだが、。70年代なので時代考証はかなりしっかりしているし間違っても携帯電話は出て来ないしPCを酷使して相手の位置を割り出す事もない、、ひたすらアナログ風に盗聴マイクに望遠レンズ、、。
 
スマイリーはアシスタントの協力のもと当時(2年前)ブタペストでは一体何が起こったのかそれを知っていたのは情報部の誰だったのかを慎重に調べて行く。話しは一転二転、、もうややこしくて途中で整理しないと判らなくなる。前後する過去の一シーンから反対側に座っていたのはダレだったかを突き止めたり協力関係はどうなっているのか、、そもそも情報部の組織自体がダレがダレに報告するのかはっきりした命令系統の説明がなくこのあたりはもう一度見ないと判らないかも、、ねえお隣にいたおばちゃん、おじちゃんも判りましたか??
 
スパイものの傑作にはハリー・パーマー・シリーズ(マイケル・ケイン主演)や同じル・カレ原作の”寒い国から来たスパイ”リチャード・バートンがあるがこれも後世に残るスパイ映画の傑作になるかも知れない。