オーレンスと言えば砂漠、砂漠と言えばアラビア、、そして実在だったT.E.ローレンスは1935年、僅か46歳の生涯を終えてしまった。そして又、その等身大のオーレンスを演じたピーター・オトゥールが79歳で現役を引退した。
映画は”アラビアのロレンス”1962年にデイビット・リーン監督が制作した名作である。この主人公に抜擢されたのは当時全く無名とも言えるピーター・オトゥール、彼が26歳の時である。実物のトーマス・エドワード・ローレンスがイギリス軍、陸軍中尉として砂漠を駆け回っていたのは1914年の第一次世界大戦勃発時から1918年頃までの20代の始めだった。
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そのピーター・オトゥールはこのロレンス役皮切りに”ベケット”ではヘンリー王Ⅱを演じ”ロード・ジム”やコミカルな喜劇を演じオードリー・ヘップバーンとも共演、”冬のライオン”では再度ヘンリー王Ⅱに挑戦、(同じ俳優が違う映画で歴史上の人物を二度も演じるのは稀なケース)しオスカーにもノミネートされた。
オスカーと言えば”アラビアのロレンス”は7部門を制覇したのだが主演男優賞だけは”アラバマ物語”のグレゴリー・ペックにさらわれてしまい以後ご本人は7回もノミネートされるも一度もその名誉を授かる事がなく2003年にやっと長年の功績を称えられて名誉賞を受賞した。
最初のデビュー作が強烈だった事もありどんな役柄を演じてもこの”オーレンス”がついて回った、、(アラビア語ではLawrenceと言う発音がO-renceになってしまい彼のアチラでの呼び名がEl Aurence)のにはご本人も不本意だったんではないだろうか。個人的にもこの映画は限りない”ベスト・テン”入りなのだが1971年の映画”マーフィーの戦い”は大変なお気に入りである、異色さもあるのだが彼の頑固そうなそれでいて信念を曲げず妥協を許さない性格がオーレンスと同じように表現されていた。
戦争末期の南米、ベネズエラのある河口、ドイツ軍のUボートに撃沈されたアイリッシュの輸送船、その唯一の生き残りがピーター演じるマーフィー。その彼が仲間クルーの恨みを晴らすべくたった一人でUボート潜水艦に孤独な戦いを挑む異色戦争映画だ。監督はこの2年前に”ブリット”を撮ったピーター・イェーツである。今風ならアクション満載の痛快スカッとするブロックバスターに仕立て上げられているのだろうが71年当時では戦闘員でもなかったマーフィーが飛行機の操縦を覚え、マシンガンの操作を覚え、敵に罠をかけ、と慣れない事を必死になって習得、戦う姿が実にリアルに丁寧に描かれていた。
そんな誠実で一つの事に埋没してわき目も振らない映画人が一人又、去っていくのは寂しい。