”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

トラに泣かされた午後、、

早く行こう早く行こうと思いつつなかなか映画館へ出向くチャンスがなかったのだがこの週末、携帯を放り出してやっと見に行く事が出来た。邦題は”ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日”、、この邦題は全部説明しちゃっているじゃないか?上映館は3Dだったんだが別の普通回へ、、今回初めて窓口で小さな声で”シニアー、、”聞き返されたらイヤだな、、と思ってカードを手にしていた、、でもあっさりと怪訝な顔もせずに11ドルでOK。家内曰く”アナタね、、自分で思っている程に若くは見えないのよ”、、だとさ、、”それで満員電車で席を譲られたら一体どうするの??”、、、もう返す言葉がない。
 
昨年初頭には”馬”(戦火の馬)に、、それから”ジャックラッセル犬”(アーティスト)、、猫には最近お目に掛からないが今回はその親戚の”トラ”ちゃんにすっかりやられてしまった。そのトラにはちゃんとリチャード・パーカーと言う名前がついている。勿論合成画面のCG満載なんだが同じトラが”グラディエーター”と対決する撮影秘話を見たのでどうやって撮影しているのかは判る。
 
監督のアン・リー、、台湾生まれだがアメリカの大学へ75年に転入、それからニューヨークで学位を取って監督業へ、95年の”いつか晴れた日に”で脚光を浴び、2000年の”グリーン・デスティニー”で各種映画賞を独占、、続いて05年の”ブロークバック・マウンテン”と素晴らしい映画を発表してくれている。今回も彼の感性を見せてくれた、、しかも舞台は当初インド、台湾人がイギリス、アメリカ、インドと世界を舞台にスクリーンに物語を展開してくれている、これには脱帽だ、、。
 
イメージ 1
これがそのリチャード・パーカーと名付けられたベンガル・タイガー君です。
 
原作は2001年にカナダで出版されたヤン・マーテルの著作、当初はイギリスで出版する予定だったのだ出版社5社から拒絶されやむなくカナダへ、そこで出版されたものをアン・リー監督が制作権を買い取り映画化へ、、。
 
映画の舞台はインドのポンデチェリー、、幼少のパイ君は両親と兄の4人家族、父親が動物園を経営する比較的裕福な家庭に育っている。その一家がカナダへ移住する事に、、動物たち全員を連れて、、。その日本の貨物船がフィリピン沖で悪天候の為に遭難、沈没、、そこからパイ君とリチャード・パーカーの苦難の227日が始まる。両親も兄も亡くしてしまい孤独なパイ、だがそんな事を考える余裕もない、このベンガル・タイガーと二人だけが救命ボートに残されてしまった。
 
しかし物語の原点はパイ君の宗教心にある。パイ君、本名はピスシーンと言うのだがこれは父親が憧れたフランスの水泳プール名から取ったもの、だが子供の頃はこの名前、、ピッシング(しょんベん小僧)とからかわれ学校ではイジメの対象になっていた。それを跳ね返すパイ君も立派だがヒンズー教にカゾリック、それにモスラムにも興味があって神(God)の存在に興味一杯の年少時代だった。そんな背景がこの漂流記に最後までついて来る。
 
イメージ 2
これは終盤、227日目にしてやっと辿り着いたメキシコの海岸、、疲労困憊して眼も開けていられないパイ君が”立ち止まって振り向くか、、”と切に願うリチャードの後姿、げっそりやせ細って歩くのもヨタヨタと、、覚束ない。それが森林の際になって立ち止まり、じっと森林の様子を眺めるアップ、、この場面にやられた。そりゃ振り向かせりゃパイ君は喜ぶし227日間かけて野生のトラと意志の疎通が少なくとも出来るようになった、、でハッピー・エンドなのだが。あえて振り向かせなかった、、その意図は。
 
パイ君が救出されたのだが仮にリチャードが一緒にその場に居たらその救出に来た人達が怖がるしヘタをすれば射殺されかねない、、リチャードはそんな事が判っていたのか振り向きもせずに野生のトラとして森林で自分勝手気ままに生きていく決心をしたんだな~、、そう思った途端、、もう画面が霞んでしまった。
 
幾ら自宅のTVがデカくても多分此処まで感情移入は出来ないだろう、、やはり映画館に限る!!