”グラントリノ”（０８年）でもう主演は”卒業だ”、、ファンには残念な宣告をしたのだが昨年”Ｔｒｏｕｂｌｅ Ｗｉｔｈ Ｔｈｅ Ｃｕｒｖｅ”で戻って来てくれたガス役のクリント・イーストウッド御大、この映画では引退を勧告されそうなプロ野球のスカウト氏を演じている。これは映画館でどうしても見たかったのだがやはりオーストラリアでは野球を題材にしたモノは誰が主演をやろうが当たらない、一応封切りはされたのだが僅か２週間の命、それを４ヶ月遅れでやっとＦｏｘが有料配信、５．５０ドルで見る事が出来た。
でもナンでこんな邦題なのかな、、そりゃ言いたい事は判るのだがどうも”人生の特等席”ったって見終わってもピンと来ないよ。直訳すると”カーブが苦手、、”でそっくりそのまま実直で頑固一徹のおやじの生き様を表現しているし終盤スカウト合戦を繰り広げる高校のルーキーは”カーブが苦手”でどうしても打てない、原題はその両方にかけているんだがな、。
野球ファンにはこりゃもう映画の出来はそこそこで最初から最後まで嬉しい限り、、中でも娘さんを演じるミッキー（エイミー・アダムス）が好演。そのミッキーはおやじの生き様が理解出来ない、、でも根っからの野球通。その名前からしておやじさんがミッキー・マントル（ヤンキースの名選手）の大ファンだったのでそれから取ったそうな、、ボーイ・フレンドとの掛け合いが又、面白い、そんな自分の名前のいわれを聞いて彼が”お父さんはヨギ・ベラのファンじゃなくてよかったな、、”これには噴出しちまう、、こんなセリフはオーストラリアじゃ絶対に受けないし、何の事かも判らないだろう。そのヨギ・ベラと言うのはミッキー・マントルより少し後の世代のヤンキースの名捕手でそれそこヨギだなんて名前を頂いちまったら笑いものだ。
それ以外にも二人で飲み屋で野球クイズをやらかすのだがこれが又、痛快。”７７年のワールド・シリーズでレジー・ジャクソンが一試合３ホームランを打った相手のピッチャーの名前は、、、”でスラスラと回答するミッキー、こりゃもう脚本の良さと言うか野球ファンのツボを押さえた映画だった。先のブラッド・ピットの”マネーボール”、映画の出来としてはブラピに軍配をあげざるおえないがこちらクリント・イーストウッドも老練なスカウト氏を好演していて素晴らしい映画だ。
映画ではアトランタ・ブレーブスがその舞台になっていて彼は専属スカウト、、田舎町を回って優秀な人材を（主に高校野球界から）掘り出して毎年開かれるドラフト会議で誰を指名するかを上層部へ補佐、進言、するのが役目。ミッキーは優秀な弁護士で社内では時期パートナーとして抜擢される寸前だ。それがガスの視力低下を心配した球団のスカウト部のボスでもある友人のジョン・グッドマンがミッキーに今度のスカウト旅行に同行してくれないかと持ちかけられ思い掛けなく父親と帯同旅行となってしまう。
このロード中に奥さんを亡くした経緯、何故ミッキーは一人ぼっちにされてしまい父親のガスも連絡を取って来なくなったのか、、次第に明らかにされて行く。終盤この旅行中に出会って心を許すようになったミッキーのボーイフレンドはその昔ガスがスカウトした選手でそれが今は他ライバル球団のスカウト。この旅行で注目を一心に集めていた一選手は、ガスに”アイツはカーブが打てないから”と忠告を受けそのまま本社へ進言、ドラフト会場では外されてしまう。ところがガスの球団では上層部に”ガスのいう事は聞けない”って幹部がいてガスが言うのにも耳を貸さずに強引に契約を強いてしまう、。
ガスの意見をそのままに本社へ伝えたボーイフレンドのジョニーは面白くない、ミッキーとガスにこれは自分の球団に入れたいが為に二人揃って俺をハメたんじゃないかと詰め寄りそのまま帰ってしまう。残された父娘、二人、、ガスは本社からの引退勧告が今度はクビ宣告かと心を痛めながらバスで帰路に着く、、一人残されたミッキー、泊まっていたモテルの庭先から派手なキャチボールの音が、フト出てみるとそのには先日田舎の球場巡りをしている時に出会ったピーナッツ売りの少年が、その男の子の投げるタマが凄い音を立ててキャッチャーをする弟のミットへ吸い込まれて行くじゃないか、、。
とまあ最後にはこの無名の高校生を先のドラフト会議で指名した”カーブが苦手”の選手と対決させ見事ガスは汚名を晴らしミッキーは弁護士事務所は辞めておやじさんの勧めでこの無名選手の代理人として活躍する事になる。そこがガスの”人生の特等席”って訳なんだが、、おやじとしては大好きな野球を一人娘が継承してくれ自分のベテランスカウトとしての地位も安泰、かねがね”コンピューターに頼って良い選手は発掘できない”と言っていた事が実践出来たって訳で球団の上層部からも見直されるのでありました、、。
