”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”フローズン・リバー”(08年)

この映画は極上のアクション抜きの”犯罪映画”に仕上がっている。原題はそのまま”Frozen River"、なんだがナンでそれを”凍った河”とか”凍てついた国境”とか工夫せんのかな?そのままカタカナってのは実に情けないのだ、、。

全然知らない映画だったが見始めてやめるにやめられない、、結局最後までいってしまった。終わってから調べたらサンダンス映画祭の審査員大賞、それにオスカーでも主演女優賞に主演のメリッサ・レオ、それに脚本賞もノミネートされていた。小粒だがピリリどころかビンビン来る映画だったんだ、、。

イメージ 1舞台はニューヨークの北部、もう川向こうはカナダと言うちっこい田舎町、其処のトレーラーハウスに住むレイ(メリッサ・レオ)は高校生と小学生の男の子、三人で細々と暮らしている。

ダンナはギャンブルに入り浸り不在、新しいトレーラーハウスを買ったのだがその購入費を持って居なくなってしまい折角新居が来たのに残金が払えず大型トレーラーに乗った”おウチ”はそのままUターンして帰ってしまう。

此処まで寒そうな風景を背景にレイが極貧生活を強いられている様子が画面から伝わってくる、それに追い討ちをかけるように長男は学校へは行ず”オレは働きたい”とごねる始末だ。夫が車に乗って出掛けたのでギャンブル場を探し回るレイ、やっとビンゴの会場外に夫の車を見つけ会場内へ入ろうとするが受付で入場料を払わないと入れません、、と言われてやむ無く外へ出てみると、、若い女性がその夫の車に乗って去っていくところだ、。慌てて追いかけその女性ライラ(ミスティ・アッパム)に追いつくと、、”この車は鍵がそのままで乗り捨てられてたのよ”との返事だ。

お互いの貧しい生活ぶりはライラもちっこいキャンピングカーで寝泊りしている様子からも判る。そしていよいよ本題へ、、実はこのライラはインディアン、モホーク族で先住民保護地区にいる為、警察の取締や監視の目が甘い事を利用してカナダからアメリカへ不法入国の運び屋をやっているのだ。

クリスマスも近い時期、何時も金欠のレイはライラの誘いに乗って最初は嫌々だがこの密入国を手伝う事になる。そのルートにあるのが”凍りついた河”、セント・ローレンス河でそこから付いたタイトルなんである。

何回か密入国をやり遂げ取り分は密航者二人で1200ドル、、それをライラと山分けするのだがそれでやっと一息つける毎日だ。ちゃんと町の金物屋みたいな所で働いてはいるのだが二年が経過しても昇進せずずっとバイト扱いじゃ三人で食べるのが精一杯だ。そんなで危ない人運びに手を染めてしまったのだがもう一度だけ、、と車のトランクに乗せて運んだのがパキスタンからの密航者、ダッフルバッグを後部座席に載せたのだが何やら今回は胡散臭い男女のカップルで”こりゃテロの手先じゃないの?”と思い込んでしまい後部座席にあったダッフルバッグを道端に捨ててしまう。

やっと何時もの中継地点のモーテルに届けて二人を降ろすのだがダッフルバッグがなくなっている事に気づいた女性が半狂乱に、、何せ言葉が通じないので何を泣き叫んでいるのやら、、。気になった二人は来た道を戻りそのダッフルバッグを探しまわる、、必死で探したお陰でやっと見つかり思わず中身を確かめて見ると、、。

私は見ていてそうじゃないかな、、と推理したのだが何と赤ん坊が、、それも寒さのせいか冷たくなって息をしていないのだ。慌てて毛布で包み折り返しさっき男女を送り届けたモーテルへ、、こりゃもう警察には行けないしどうしたものか?モーテルの裏部屋で泣きじゃくっていた母親に無事手渡す事が出来た、、するとやっと体温が戻ったのか息を吹き返し赤ん坊はママの手に渡ったのでした、、。

しかしやっぱり悪いことは続かない、警察ではライラが常習犯として密入国をやっている事を既に察しているのだ。でもレイはもう一回やればトレーラーハウスの代金が稼げると割り切って最後のひと稼ぎを、、今度は若い中国人女性二人、ところがパトカーに怪しまれ追いかけられてしまう。追っ手を巻くために普段は通らない箇所で凍った河を渡ろうとして解けた箇所で遂に立ち往生となってしまう。そして一目散に徒歩で先住民保護地区へ逃げ込む二人と中国人の娘たち二人、に見ている方は凍りついた寒そうな背景にもかかわらず手に汗を握りしめ、となるのであります。

最後は司法取引の結果、密入国運び屋を認め、レイが4ヶ月刑務所へ、ライラは別れていた乳児を義母から引き取る事が出来刑務所行きは免れる、そしてどうやらレイ宅に二人揃って引き取って貰う雰囲気、、ラストシーンはレイの息子たち二人がいる部屋の窓ガラスの向こうに大きなトレーラーに積まれた新品のトレラーハウスがこっちへ向かって走ってくる様子が、、。

っと最後はハッピーエンドを予感させるグーな演出となっていました。この作品、アメリカの女流監督コートニー・ハントの初作品とか、、いきなりサンダンス映画祭で受賞、、更にはオスカーにもノミネートと上々の監督業の船出となりました。これからが楽しみが監督です。いや~、、毎日探しているとこうして素晴らしい作品にぶつかるのです。犯罪ものとは言ってもそんなに派手さはない、むしろ女性二人が必死になって水面上に顔を上げなんとか生活を維持しようと必死になっているサマに思わず応援したくなる、そんな作品でした。