”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”ブリット”(68年)

このスティーブ・マックイーンがサンフランシスコを舞台に寡黙な刑事さんに扮する犯罪ドラマは好きな映画トップテン入りは間違いない。同じサンフランシスコの刑事、”ダーティ・ハリー”は71年に制作されたので3年後のお話し、でも時代設定やサンフランシスコの街並みは100%共通する情景だ。

過去に何度なく見ているのでこのブログにも書いていると思い検索してみたら単独では記事にしてなかった。fpdさんは何せこれが初めてご覧になった刑事ものでもう複数回記事にされているのだが、、。

イメージ 1それに最近までこの”ブリット”と言うのは”Bullet”(弾丸)だと思っていた節もあるのだが原題は”Bullitt”で彼の名前、フランク・ブリットと言うことだった。


映画は実にスタイリッシュな始まりでとてもこれがピーター・イェーツの監督、初仕事とは思えない。音楽を担当していたのはこの時代、多くのテレビドラマを手掛けていたラロ・シフリンなのでこっちはお手のもの、一気にワクワクさせてくれる。

タイトルロールで主演名が出ている間にいきなり佳境へ、場所はシカゴ、深夜の事務所へ人相の悪い奴らが武装して押し入る、銃撃で窓は粉々、そして発煙筒を点火している中で一人が逃げ出して行く。こりゃもうソファに乗り出すっきゃない、そんなスリリングなオープニング、、、危うく2ページ目の出演者にロバート・デュバルの名前を見逃すところだった、、。話は逸れるがそのデュバル様、この映画での本当のチョイ役出演から僅か3本を経て”ゴッドファーザー”(72年)で弁護士役に抜擢されているんだ、これは凄い事ではなかろうか?

主題に戻ると場面は一転してサンフランシスコへ、朝の5時にやっと寝たらしいフランク・ブリットを朝っぱら叩き起こしに来た相棒のデルゲッティ、二人は連れ立って上院議員のチャルマース(ロバート・ヴォーン)に会いに行く、。その任務とはシカゴからやって来たジョニー・ロスの警護を24時間体制でやる事、何となく一方通行的での命令口調は気に入らないがそれも任務じゃしょうがない。

そのロスはチャルマース上院議員が開催する公聴会で重要証人として出廷する予定なのだ、。その証言とはシカゴの犯罪組織の摘発にかかわるものでチャルマースは自分の野心の為に何とかロスに証言させ組織撲滅を狙っている、。

イメージ 2ここまで一気にドラマは進むのだが構成も脚本からも目が離せない。それに撮影されている箇所は実にワタシが知っている50年前の脳内メモリーとそっくり重なるのだ、、まあこれは映画の出来とは関係ないが知ったホテルや街並みが出て来るのは実に嬉しい。このチャルマースの嫌味な雰囲気や上から目線の話し振りは口には出さないがブリットは馴染めないし協力してやろうと言う気にもならないのだ、。

まあそれでも任務とあらば、、恐らくこの日は週末に入った所なので月曜日に出廷させるまでの週末の護衛任務を仲間3人でやる事になる。担当を決めてロスがいる安ホテルへ、しかしブリットはこの安ホテルが気に入らない、警護がし難いし近所の高速道路からも狙撃されそうな嫌な予感がする。案の定、深夜にチャルマースと仲間を名乗る訪問者がありドアチェーンを外したロスは散弾銃で撃たれ、警護の一人も重傷を負ってしまう。

病院へ搬送されるがロスは危篤、、病院へ立ち寄ったチャルマースは怒り狂ってフランクやその上司へ食って掛かるのだがブリットには何故ロスはチャルマースが深夜ホテルへ来るのを待ってドアチェーンを外していたのか不審でならない。

そしてかの有名なムスタングダッジチャージャーの追跡劇になるのだ。これはサンフランシスコの坂を使った追跡劇シーンで半世紀が経過してても思わず腕や肩に力が入る映画史上屈指の名場面である。”フレンチコネクション”でポパイ刑事(ジーン・ハックマン)がニューヨーク市内で地下鉄の高架下を突っ走る場面とこの追跡劇は語らない訳にはいかない、、。

映画の方はそこから一気にクライマックスへ、どうやらこの証人としてシカゴからやって来たロスはホンモノじゃないらしい、、ブリットが調べて行くとシカゴの犯罪組織から現金を強奪したのは別人でロスは身代わりとしてやって来たらしいのだ。そして今度は空港から高跳びしようとした真犯人を追って追跡劇へと、、さてチャルマースの野望を砕きブリットは留飲を下げる事が出来るのか、、。

やはり”良い”映画には魅力が満載だ、それが時代や風習を捉えている事であったりカーチェイスやその車種であっても各ショットに見応えがある。更に共演のジャクリーン・ビセットを上手く使い監督は我々に暴力の怖さ、無益さそしてごく普通の一般市民が巻き込まれてしまう可能性とその現状をしっかりと伝えてくれる。時代背景が半世紀も前の事だと言うのに現状のアメリカ国内の銃規制には何ら進展もなく相変わらず危険な世界である事を思い出させてくれるのだ、。


映画の好き度:☆☆☆☆
ブログの出来度:☆☆☆☆
IMDbの評価:7.5