”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

“恋人よ帰れ!我が胸に”、 原題は“The Fortune Cookie” (66年)

これは素晴らしい邦題ではないか。しかも映画の内容を的確に表現している。監督はビリー・ワイルダー巨匠、“麗しのサブリナ”〔54年〕、“昼下がりの情事”(57年)とオードリーを独占したあと“お熱いのがお好き”(59年)、“アパートの鍵貸します”(60年)、でジャック・レモンと組み、引き続き“あなただけ今晩は”(63年)に抜擢、そしてこの映画ではウォルター・マッソーとコンビを組ませた。
イメージ 1
原題は“The Fortune Cookie”と言って中華料理屋へ行くと最後に決って出される“おみくじ入り”のお菓子の事である。日本の中華屋さんでは出て来ないが北米では今でもこれが出て来る。映画のなかでも重要なポイントになっているのだがこれを“恋人を帰れ、、”こりゃ“Lover Come Back To Me”と言うロック・ハドソンの映画の原題を逆輸入して邦題としたみたいなもんだ、当時はこんな感性のある配給会社担当者がいたんだよ、因みにビリー・ワイルダー監督の作品から見ても;
Love In The Afternoon = 昼下がりの情事(こりゃ当時ちょっとどころかかなり刺激的だった、しかもオードリー・ヘップバーンだし、、)
The Apartment = 単にアパートじゃなくて“鍵”を貸しちゃう
Sabrina = これも前に“麗し”を付けた。
Some Like It Hot = こりゃ直訳だが“お熱いのがお好き”、その他の作品も素晴らしい邦題のオンパレードである。
イメージ 2
映画はTVのカメラマンを演じるハリー(ジャック・レモン)が中継中にオフサイドに飛び出してきた若いが有望な選手に突き飛ばされて失神、怪我をしてしまう。それを見た義兄の弁護士、ウィリー(ウォルター・マッソー)はワル知恵を発揮、障害を持った事にして選手のチームから法外な医療金をせしめようと計画する。
ハリーには片思いの恋人がいて出来るものならもっと親密な関係になりたい、それを知っているウィリーにまんまと乗せられもうすっかり全快しているのに首には石膏、車椅子でその計画に止む無く加担する。ウィリーはこの計画をサンディに話し大金が入るんだからと病院にも呼びハリーの看病を任せる。ところが肝心のぶつかって来たフットボール選手のジャクソンは気立ての良い人柄、怪我をさせたことを後悔して試合をほっぽり出しても毎日看病に来る始末、そんな献身的な彼を見ているとハリーは良心の呵責に耐えない、、。
この口八丁手八丁の義兄ウィリーの立ち回りと良心が咎めだしたハリーとのやり取り、そこへ割り込んで来る恋人のサンディ、もうビリー・ワイルダー監督の独壇場である。ホロリとさせ笑わせ、同情させ、怒らせと見ている方をもう自由自在に操ってくれる。気が付くと有望な選手、ジャクソンが選手生活を始めたばかりでもう終りか、、でとっても可哀相だし、ハリーも愛しのサンディがどうも愛情じゃなくてお金目当てのようで思わしくない有様。最後はもう我慢も限界、ジャクソンをフットボール場へ連れ出し首の石膏を剥ぎ取りすっくと立ち上がるとフィールドをタッチダウン目指して走り回って行く、、それを茫然と見送るウィリーとサンディ、、スカッとするエンディングに惜しみない拍手を、、。