”オールド・シネマ・パラダイス”、、時々新作も

長年”映画と愛猫とオーストラリア”だったが札幌へ軟着陸し愛猫も亡くしこの新タイトルで心機一転だ。

”アウンサンスーチー女史”

イメージ 1この映画は映画館へ見に行く積もりでいたのだが、、気が付いたらもう上映が終っていた。そこでDVDが解禁になったので早速、、ミシェル・ヨウが主人公のアウンサンスーチー女史を演じているのだが素晴らしいじゃないか、、何でオスカーにノミネートされなかったんだろう、、はっきり言って同じ”The Lady”、あっちの”Iron Lady”に勝っているような気がするのだが、、、それともビルマとイギリスじゃ最初っから勝負にならないのかな??
 
この映画、邦題は”アウンサンスーチー、引き裂かれた愛”とある。そりゃ焦点がご主人との”引き裂かれた”環境にあるので至極ごもっとも、でも純然たる恋愛映画じゃないしもっと彼女のビルマに置ける貢献度をタイトルに使えなかったのか、。或いは”ザ・レディー”、そのままでも良かったんじゃないかな、、。
 
監督はルック・ベンソン、、これには驚かされた。とてもこれまでの彼の手法や感性を思うとこんな伝記映画、しかもご本人は健在、を撮るとは思えなかった。フランスや中近東を舞台にアクション満載でこれでもかと言う男っぽい映画が売りなのだが、、。ご本人も多分その辺りは充分知っていて全く違うジャンルに挑戦してみたかったんだろうな、、。
 
イメージ 2これは2011年のご本人、1945年生まれでおっさんより少し先輩ですがまあ同じ世代なので近親間がある。ビルマの軍事部隊設立者でイギリスからの独立に多大な貢献をした父親の一人娘として生まれる。男の兄弟が二人いたのだが父親は47年に軍部で対立する相手に暗殺されてしまう。
 
母親に育てられるのだがその母親はビルマの大使としてインド及びネパールへ赴任、そんな環境だったので幼少からインターナショナルスクール育ち、64年にニュー・デリーで政治学修士課程を終え大学を卒業、今度はイギリスのオクスフォード大学へ留学、69年に哲学、政治経済でBAを取得している。その後ニューヨークへ渡り国連に3年勤めている。その頃に将来結婚する事になるマイケル・アリス博士と知り合うのだが映画では結婚して生まれた息子達がティーンエージャーの頃、88年から99年くらいが描かれている。
 
自宅に監禁状態になり幽閉が15年間も続く、民主化を恐れる軍部の指示なのだがそれを指示する軍部の大将がこりゃもう悪人面、平気で命令に背く部下を撃ってしまったりあんな独裁者モドキの軍幹部に狙われていたのかと思うと恐ろしい。
 
自宅監禁されている頃、彼女の協力者や支援者も牢獄へ放り込まれてしまうのだがそれを阻止する為にハンガー・ストライキを決行する。日本の介入や国連からの手助けもあってあと数日で命が危ないと言う難局を打破するあたりは圧巻、ミッシェルさん渾身の演技だった。遂に軍部も折れて牢獄の支援者たちは解放されるのだがそれでも自宅監禁は続く、現存している人の伝記ものの制作には困難が伴うのだがミシェル・ヨウが見事にアウンサンスーチー女史を演じている、これなら女史からも”OK”が出ただろう、、。
 
ご主人のマイケル・アリス博士を演じたデイビット・シューリスはイギリス人性格俳優、”ハリポタ”シリーズにも出ているし一昨年は”戦火の馬”にも登場、苦悩するご主人役がこれまた見事な出来だった。この主人はチベットの研究者として広く知られた学者さんなのだが99年に僅か53歳でその誕生日当日に亡くなってしまう。
 
イギリスで治療に当たっているご主人、スーチーさんは何としてでも行って最後を看取りたいのだが行けば今度はビルマへの再入国は認めないとの軍部からのお達し、国際電話も盗聴されている為少し時間が経つと遮断されてしまう、民主化を先導するか、ご主人を看取りに行くかで揺れるスーチーさんを演じたミシェル・ヨウ、おっさんは断然サッチャーさんのメリルより貴女を押すよ、、、。